主な検査・治療方法MEDICAL
血液検査
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血液を採取し、花粉や食物などのアレルギー、肝臓や腎臓など内臓の状態、炎症反応などを調べます。
パッチテスト
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アレルギーの可能性のあるものを皮膚に貼り、その反応を判定します。
顕微鏡検査
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水虫・カンジダ・疥癬など真菌や虫体の有無を顕微鏡で調べます。
病理組織検査
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局所麻酔をして皮膚の一部をとり、発疹や腫瘍の状態を調べます。
外用療法(塗り薬)
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アトピー性皮膚炎やかぶれ、火傷などをはじめ、さまざまな皮膚疾患に用います。処方する外用薬は患者さまの皮膚の状態や疾患により異なります。
内服療法(飲み薬)
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かゆみや発疹をやわらげたり、原因となるウイルスや細菌の働きを抑えたり、体内の組織に働きかけます。 処方する内服薬は患者さまの皮膚の状態や疾患により異なります。
凍結療法
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-196℃の液体窒素を用いて、いぼや脂漏性角化症などの腫瘍性病変を除去します。
手 術
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局所麻酔をして粉瘤やほくろなどの腫瘍を切除します。多くの場合は診断のために病理組織検査も行います。
紫外線療法
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エキシマランプという機器を用いて、特定の波長(308nm)の紫外線を照射する治療法で、アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・尋常性白斑・掌蹠膿疱症などに保険適用があります。
紫外線が持つ免疫を調整する作用を用い、従来の紫外線療法(PUVA、ナローバンドUVB)よりも少ない回数で改善効果を認めやすく、効果の持続も長いと言われており、従来の治療では改善に乏しい小範囲の病変がよい適応となります。
エキシマランプ(exciplex308)
皮膚の病気について知るMEDICAL
アトピー性皮膚炎
主な症状
かゆみのある湿疹が良くなったり、悪くなったりを繰り返します。湿疹は概ね左右対称で、乳児では頭、顔からはじまり、体、手足に降りてくることが多く、小児では首や関節の曲がるところ、大人では上半身に症状が強い傾向があります。ご家族が過去や現在、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎をお持ちのことが多く、ご本人がIgE抗体というアレルギーに関わる抗体を作りやすい体質であることも多いです。また、フィラグリンという天然保湿因子の産生が低下しているなど、乾燥肌、皮膚のバリア機能低下からアトピー性皮膚炎を発症することも言われています。
治療法
「1.炎症の制御」「2.スキンケア」「3.悪化因子の検索と対策」この3本柱が治療の中心となります。
1.炎症の制御
湿疹が続くことによって皮膚のバリア機能の低下、刺激に過敏になることから痒みを生じ、掻くことでさらに皮膚のバリアが壊れるという悪循環に陥るため、ステロイドやタクロリムスといった外用剤を使って炎症を抑えます。局所的に症状の強い部位ではエキシマライトという紫外線治療器も有効なことがあります。痒みに対しては抗ヒスタミン剤を用います。シクロスポリンといった免疫抑制剤の内服や、アトピー性皮膚炎の悪化に関与する免疫に作用する蛋白であるIL-4(インターロイキン)、IL-13を抑える注射薬(デュピルマブ)も重症のアトピー性皮膚炎では保険適応となっています。
2.スキンケア
アトピー性皮膚炎では角質の水分含有量が低下していることから皮膚が乾燥し、バリア機能が低下しています。保湿剤を塗ることで皮膚のバリア機能が回復し、皮膚炎の再燃予防と痒みを抑えることにつながります。特に赤ちゃんの頃からスキンケアをしっかり行うとアトピー性皮膚炎の発症率が低下することが示されており、スキンケアは重要だといえます。
3.悪化因子の検索と対策
生活に関わる様々なものが悪化因子として挙げられます。食物アレルギーやダニ、ホコリ、花粉や黄砂、PM2.5などの環境アレルゲン、汗や唾液(特に乳児)、シャンプーや石鹸、化粧品、衣類の刺激、感染症などです。これら悪化因子は個々で異なるので、患者さんと相談しながら検査を行い、悪化因子が分かれば一緒に対策を立てていくことになります。
じんましん
主な症状
じんましんは通常、痒みを伴う虫さされのような盛り上がった紅斑が突然出現し、場所をかえて出たり消えたりします。ただし、痒みのないもの、赤みだけがみられ盛り上がらないもの、まぶたや唇だけが腫れあがるもの、数日間消えずに続くものなどさまざまなバリエーションがあります。
息苦しさや、意識がもうろうとするなどの症状(アナフィラキシー)も伴っていれば重症ですので、すぐに救急病院を受診してください。
原因や悪化因子としては食物、感染症、機械的な刺激、運動発汗、ストレス、薬剤などさまざまなものが挙げられますが、原因が明らかにできるのは3割程度とされています。
治療法
じんましんの反応を抑える抗ヒスタミン薬の飲み薬が第1選択になります。
明らかな原因があればそれを回避することになります。疑わしい原因があればアレルギーの検査などで原因を特定できることがあります。
抗ヒスタミン薬などの飲み薬でも症状を抑えられない原因不明の蕁麻疹では、血液中のIgEの受容体をブロックする注射薬(オマリズマブ)が保険適用となっています。
アナフィラキシーを伴う重症のじんましんでは、症状が出たとき緊急避難的に自分で注射するアドレナリンの注射薬を携帯することをお勧めしますが、事前に練習する必要がございますので御相談ください。
かぶれ
主な症状
何かに触れた結果、赤くなったり、水ぶくれやかさぶたができたりといった湿疹を生じるものをかぶれ(接触皮膚炎)といいます。 かぶれはその物質の毒性によって誰にでも生じうる刺激性の接触皮膚炎と、その物質に対してアレルギーを持つようになった結果生じるアレルギー性の接触皮膚炎に大きく分けられます。 刺激性接触皮膚炎の代表的なものは手荒れやおむつかぶれなどで、アレルギー性接触皮膚炎の原因としては毛染めや化粧品、医薬品、植物、金属、ラテックスなどさまざまなものがあります。
治療法
原因となる接触源を断つことが基本になりますが、家事や職業性など回避することがなかなか難しいこともあります。 原因を調べるためにはパッチテストがあります。疑わしい物質を背中や腕に2日間貼りつけておき、その後反応をみるというものです。 治療としては皮膚の炎症を抑えるステロイドの塗り薬が基本になります。かゆみがあれば抗ヒスタミン剤の飲み薬も併用します。
帯状疱疹
主な症状
帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化により生じます。
水ぼうそう(水痘)にかかったあとや水痘ワクチンを打ったあと、ウイルスは神経節に潜伏します。年余を経て免疫力が低下した状態になるとウイルスが増殖し、神経を伝って皮膚に出てきます。そのため神経の支配領域に沿って水ぶくれや紅斑がみられますが、神経は左右で独立しているため、ほとんどは左右どちらかにしかでません。顔では1.頭~おでこ~鼻、2.頬、3.耳~顎にかけて、体幹では肋骨に沿って、四肢では縦から斜めの範囲に出てきます。神経をいためながら出てくるため、皮膚に症状が出る数日前からチクチク、ピリピリといった神経痛や頭痛、肩こり、腰痛などを自覚していることもあります。
治療法
ウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬の飲み薬が第1選択になります。
重症例では点滴治療を行うこともあります。症状をおさえるためにはなるべく早くから治療する必要があり、治療を開始しても効果が出るまで2~3日かかります。
痛みを伴う場合には痛み止めの飲み薬も併用します。
後遺症として帯状疱疹後神経痛があり、神経痛に対する治療を行います。
合併症として眼症状や顔面神経麻痺、運動神経麻痺などがあり専門的治療を要します。
単純疱疹
主な症状
単純疱疹は単純ヘルペスウイルスにより生じます。
風邪など高熱の際に出現することもあり「熱の花」ともいわれます。全身どこにでも生じますが、口唇や陰部にできることが多いです。典型的には小さい水ぶくれが数個集まった紅斑が限局してみられますが、初感染やアトピー性皮膚炎の患者さんでは水ぶくれや点状のびらんがとびひのように拡がった形でみられることもあります(カポジ水痘様発疹症)。
治療法
ウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬の飲み薬や塗り薬が第1選択になります。
ニキビ
主な症状
1.白ニキビ
ニキビ(ざ瘡)は10~30歳代の顔面、胸部、背部に好発します。皮脂腺の機能亢進により皮脂の分泌が増えますが、毛包(毛穴)に角栓が生じることで、皮脂が毛包内に貯留します。
2.赤ニキビ
毛包内にたまっている皮脂を増殖したアクネ菌が皮脂を分解すると遊離脂肪酸が発生します。それにより毛包内に炎症が生じます。
3.ニキビ痕
炎症が拡大し、毛包が破壊されるようなにきびでは治った後に瘢痕(にきび痕)を残すことがあります。
治療法
ホルモンバランスの乱れや遺伝的要因、ストレス、食事、便秘、化粧品の刺激などが発症に関与していると考えられていますので、まずは規則正しい生活、洗顔を心がけましょう。 化粧はノンコメドジェニック化粧品を使いましょう。 治療薬としては毛包の角化をおさえる過酸化ベンゾイルやアダパレンを含有した外用薬が中心になります。これらの外用薬は塗り始めに刺激感や皮膚の乾燥、赤みなどを生じることが多いです。また、ニキビの治療だけではなく予防にもつながるので長期に継続することが勧められます。 炎症をともなうニキビでは抗菌薬の外用や内服も行うことがあります。ビタミンB2・B6、漢方薬も必要に応じて処方することがあります。
いぼ
主な症状
いぼ(尋常性疣贅)はヒトパピローマウイルスの感染によって生じます。小児、青年の手足や顔にできることが多く、表面がザラザラした固いしこりやウオノメのような陥凹病変としてみられます。自然治癒することもありますが、ほかの部位にうつって拡がることもよくあります。
治療法
一般的な治療として液体窒素による凍結療法があります。いぼの部分を低温やけどさせるため、施行後ジンジンとした痛みがでます。数日経つとかさぶたや水疱になって表面が剥がれますが、これをいぼがなくなるまで1~2週間ごとに繰り返します。難治性のいぼでは、ブレオマイシンという抗腫瘍薬を局所麻酔薬と混ぜていぼに注射する方法も行っています。液体窒素より治療効果が高いと考えていますが、液体窒素より痛いです。ほかにはヨクイニンというハトムギ由来の飲み薬もあります。
水いぼ
主な症状
水いぼ(伝染性軟属腫)は伝染性軟属腫ウイルスの感染によって生じます。幼小児にできることが多く、数mm大の白っぽいぶつぶつが単発~多発します。
治療法
自然に治ることもありますが、それまでに長期間かかったり何十個にも増えたりすることが多いため、周りに感染することも考慮してピンセットで摘除します。当院では痛みを緩和する目的で麻酔薬のテープを2時間貼ってから処置することをお勧めしています。ただし、麻酔薬でごくまれにアレルギー症状を生じることがありますので、気分不良や冷や汗、呼吸困難を生じた場合はすぐに総合病院を救急受診してください。 学校を休む必要はありませんが、プールなど肌の触れ合うところではタオルやビート板の共用を控えた方がいいでしょう。
水虫
主な症状
水虫は白癬菌という真菌(いわゆるカビ)が皮膚の角層に寄生して生じます。足に生じたものは「水虫」と呼ばれますが、股に生じれば「いんきんたむし」、体なら「ぜにたむし」など俗称は異なるものの同じ白癬菌によるものです。 水虫の症状は足の指の間がふやけたり、逆にカサカサして皮がめくれたりする趾間型、足の裏に小さな水ぶくれができ、その後皮がめくれてくる小水疱型、踵をはじめ足の裏がカサカサして分厚くなる角質増殖型があります。角質増殖型では痒みはほとんどありません。 爪水虫では爪が白くなったり、黄色くなったり、分厚くなったりします。
治療法
抗真菌剤の塗り薬が基本になります。 ただし、爪水虫や角質増殖型の水虫、白癬菌が頭髪の毛包に寄生している場合は塗り薬が効かないこともあり、飲み薬で治療します。 患部を清潔に保ち、蒸れないようにしましょう。スリッパやサンダルの共用は避け、バスマットは頻回に交換しましょう。
乾癬
主な症状
乾癬では皮膚に慢性の炎症が続いており、表皮角化細胞の増殖が亢進した結果、銀白色の鱗屑(皮膚の粉)を付す盛り上がった紅斑を生じます。発疹は機械的な刺激を受けやすい頭、肘、膝、臀部、すねなどにできやすく(尋常性乾癬)、爪にも生じることがあります。
15%程度の患者さんでは関節炎を伴うことがあり、関節症性乾癬や乾癬性関節炎といわれます。ほかに膿をもったような水ぶくれが主体の膿疱性乾癬、小さい紅斑が多発する滴状乾癬、全身が赤くなる乾癬性紅皮症があります。
乾癬が起こる原因はよく分かっていませんが、欧米人は日本人より患者さんの割合がはるかに高く、家族内発症も20~40%にみられることから遺伝的素因に生活習慣、食事、ストレス、感染症などの要因が加わって発症すると考えられています。
治療法
軽症ではステロイドや活性型ビタミンD3の塗り薬が中心になります。
紫外線療法も有効でナローバンドUVBやエキシマライトなどが用いられます。当院ではエキシマライトによる紫外線療法が可能です。
これらでも効果が乏しい場合には、ビタミンA誘導体(エトレチナート)や免疫を抑えるシクロスポリン、過剰な炎症反応を抑えて症状を改善させるPDE4阻害剤の飲み薬を用います。
重症や関節炎を伴っている患者さん、乾癬によって生活の質が非常に低下している患者さんでは、乾癬の炎症に関わる蛋白であるTNF-α、IL-17(インターロイキン)、IL-23といったサイトカインの働きを抑える注射や点滴薬(生物学的製剤)が保険適応となっています。生物学液製剤の導入は日本皮膚科学会から承認を受けている施設(主に大学病院や総合病院)に限られます。
これら乾癬治療の飲み薬や生物学的製剤にはそれぞれ副作用や必要な検査などがありますので、お気軽にご相談ください。
掌蹠膿疱症
主な症状
掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏に膿をもったような水疱が多発し、やがて皮がめくれたり、皮膚が分厚くなったりを慢性的に繰り返します。 原因は不明ですが、喫煙、扁桃炎、虫歯(齲歯)、金属アレルギーなどが関与している場合もあります。掌蹠膿疱症の10~30%では胸などの関節痛を伴います。
治療法
軽症ではステロイドや活性型ビタミンD3の塗り薬が中心になります。
塗り薬で効果が乏しい場合には、ビタミンA誘導体(エトレチナート)や抗菌薬などを用います。
紫外線療法もよい適応で、ナローバンドUVBやエキシマライトなどが用いられます。当院ではエキシマライトによる紫外線療法が可能です。禁煙、病巣感染の治療、歯科金属の除去が有効であることもあります。
ウオノメ・タコ
主な症状
ウオノメ(鶏眼:けいがん)・タコ(胼胝:べんち)はいずれも機械的な刺激を繰り返し受けることで皮膚が反応性に分厚くなった状態で、皮膚の下に骨を触れる部位にできます。 タコは角層が表面に向かって厚くなっているのに対して、ウオノメは肥厚した角質が皮膚の奥の方に芯の状態で存在するため圧痛を伴います。
治療法
固くなった角質を削ります。高度に肥厚している場合は軟らかくするサリチル酸絆創膏を数日間貼付します。 また、慢性刺激や局所的な圧迫が原因なので、刺激を避ける、除圧することが必要です。
陥入爪
主な症状
深爪をした結果、爪の端が周囲の皮膚を傷つけてしまい痛みを生じます。食い込んだ爪に対する反応で出血しやすい赤いできものを(肉芽)を伴うこともあります。食い込んだ爪を切ると一時的に痛みは取れますが、伸びた爪がさらに食い込み悪循環を繰り返します。
治療法
短くなった爪を足趾より長くなるまで伸ばせば治癒します。
爪が伸びるまでの間、皮膚に食い込まないように爪と皮膚の間にチューブや綿花を挿入する方法や、人工爪を装着する方法があります。
食い込んでいる部分の爪を手術や薬液で生えないようにする方法もありますが、爪の幅が狭くなる弊害があるため当院では行っておりません。
巻き爪
主な症状
第1趾に多く、爪が内側に巻いているため、爪が皮膚に食い込んだり挟まれたりして痛みを生じます。 足先の窮屈な靴を履いている、外反母趾や関節リウマチなど足趾の変形がある、立ったとき足趾が浮いている、足趾を踏み込んで歩いていないことなどが要因と考えられます。
治療法
爪先端の両側に穴をあけ、超弾性ワイヤーを通してワイヤーが真っすぐになろうとする力を利用して巻き爪を矯正します。
伸びている爪に穴をあけるので痛みはありませんが、爪が短く穴をあけるスペースがなければできません。(保険適用外)
爪の両端にフック状のワイヤーを掛け、その張力で巻き爪を矯正する方法もあります。(保険適用外)
いずれにしても矯正期間は長期になりますし、悪化因子の対策も必要です。